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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(オ)323号 判決 1958年7月18日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人らの上告理由について。

酒税法(昭和二八年法律第六号による改正前のもの)五三条は「……免許ヲ受ケザル者ノ製造シタル酒類、酒母、醪又ハ麹ハ之ヲ所持シ、譲渡シ又ハ譲受クルコトヲ得ズ」と規定し、同六二条一項は「左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ一年以下ノ懲役又ハ十万円以下ノ罰金ニ処ス。一……二……三第五十三条ノ規定ニ違反シタル者四……」と規定し、更に、同条三項として「第一項第三号ノ酒類、酒母又ハ醪ニ付テハ第六十条第五項ノ例ニ做ヒ犯人ヨリ直ニ其等ノ酒税ヲ徴収ス」と規定している。

右によれば、前記六二条三項により酒税を徴収される、いわゆる犯人とは、同五三条の規定に違反した者、すなわち、免許を受けざる者の製造した酒類等を所持し、譲渡し又は譲受けた者その者をいい、これを幇助した者を含まないものと解するを相当とする。すなわち、右五三条の違反行為を幇助した者は、刑法八条六二条により処罰されるが故に広い意味で科刑上いわゆる犯人ということができるとしても、課税上も同じに取扱うということは当然には出て来ないのであつて、酒税を徴収すべき者については酒税課税の点から別に検討すべきであり、これを同法六〇条の場合について考えてみるに、同条は免許を受けずして酒類等を製造した者を処罰すると同時に、同条五項で右製造者が酒税を徴収されることになつているのであるが、右酒類等の製造を幇助した者は前記刑法の規定により同じく処罰されるのであるが、酒税徴収の対象になつておらないのである。このことから見ても、同法五三条の違反行為の幇助者に対しても、法は酒税を課する対象としていないものと解するのが相当である。

然らば右と同趣旨に出でた原判決は正当であつて、論旨は採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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